《番組部門》

『爺と丁稚と花〜女性石職人の特別な一日〜』

株式会社 CTV MID ENJIN
兼松 俊之

 「強い目」が印象的でした。
「意志の宿る目」とでも言うのでしょうか。

爺  道を知るもの
丁稚 道を知らんとするもの
花  受け継がれる心

「丁稚」である若い職人が、経験を豊富に積んだ老職人「爺」のもとを訪ねたら、
どんな「花」が咲くのだろうか? 出会いという偶然が、心に何かを灯すのだろうか?

ある種、制作サイドから“仕掛け”ながらのドキュメントでした。しかし『職人』という共通項以外に、年齢も性別も、育った環境も違うふたりは、私達の予想をはるかに超える次元で見事に共鳴しあい、お互いを讃え合い、石職人の上野さんの抱えていた“将来に対する漠然とした不安感”に、一筋の光が差したようです。

この番組は、最初の冬の出会い(2011年2月)を経て、半年後の夏、石職人の上野さんが再びお盆の松本を訪ねるという構成にしました。人と人との繋がりが希薄な今、偶然とはいえ出会ったふたりの職人が、互いを認め合い尊敬し合っていることの素晴らしさ。放送をお盆にしたのも、石職人の上野さんがバイオリン職人の井筒さんの元へ「里帰り」「帰省」する、というような意味を込めたかったからです。

おふたりのように自分の仕事に誇りを持ち、自分の手で何かを作り出すことの気高さ。
おふたりに共通して感じたのは、作り出すものへ込める「心」。

私が感じた「強い目」の奥にあったもの。
それは、愛するペットを失った飼い主を想い、来る日も来る日も固い石に向かう。
初めて弾いた演奏家の表情を思い浮かべながら、ひたすら木に向かう。
「心をこめて」作っている職人さんだからこその「目ぢから」なのだ、と思いました。

心を込めて作ったものは、やはり素晴らしいのです。
当たり前の事ですが、今回の取材を通して感じた最大の思いです。

ふたりの素敵な職人さんはもちろんのこと、この番組にかかわった全ての方々に
感謝致します。全てのスタッフで頂いた賞だと考えています。



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