メ〜テレドキュメント 長い助走 〜タオルに賭けた町工場の記録〜
名古屋テレビ映像
報道制作本部
                                          佐藤 大介

「番組部門」で大賞をいただき、誠に光栄です。番組制作においての取材期間は8か月間。「果たして番組になるのか」と悩んだ時期もあり、今回の受賞はスタッフ一同、感慨ひとしおです。

この番組は、苦境に喘ぐ繊維業界のなかで、再起を賭けて新しいタオルの開発に賭けた町工場の人々を追ったものです。去年は「東海地方は元気だ」とマスコミで騒がれていました。私たちは毎週放送のミニ経済番組を担当しており、さまざまな会社へ取材にお邪魔しています。でも、多くの会社の人たちは言いました。「どこが景気がいいんだよ・・・・。」特に悲鳴を上げていたのが、中小の町工場の人たちでした。
そんなとき、去年1月に経済番組で取材した町工場の社長が、新しいタオルの開発に取り組むことを教えてくれました。今までにない新しい糸でつくるというのです。タオルを共同開発するという会社にお邪魔したところ、そこには「元気な東海地方」とはかけ離れた空気が漂っていました。空きが目立つ工場。動いていない埃だらけの機械。しかも従業員の半分以上はパートさん。東海地方の町工場の本当の姿が現れていました。
でもここで働く人々からは、新しいタオルに賭ける熱い想いが沸々と感じられました。「この会社がどうなるかはわからないが、生き残りを賭けて戦う人々の姿を追っていこう」と撮影を始めました。しかし実際に撮影を始めると、思う通りに事は進みません。タオル開発におけるトラブルが何度も発生し、なかなか完成しなかったのです。私たちも不安でした。先行きのわからない取材は本当に大変です。でもこれこそドキュメンタリーです。何の台本も構成もなく取材を進めるなか、見事に番組として描いてくれたカメラマンには本当に感謝しています。
糸からタオルをつくるには、「糸の選別」「製経」など何十工程もあります。今回、完成までに時間はかかりましたが、あせらず職人さんたちが力をあわせて、良いタオルを作り上げました。

今回の番組制作は、「モノづくり」という観点から見ると、タオルの開発と同じだったと思います。番組をつくるには、「度重なる取材」「構成」「編集」など何十工程もあります。完成までに時間はかかりましたが、あせらずスタッフみんなが力をあわせて、良い作品を作り上げました。パズルのように、たとえ小さなかけらにしか見えないものでも丁寧に集めて並べていかないと完成品は出来上がらない。ドキュメンタリー番組の制作の基本を改めて感じました。



【戻る】